いつも通り運転しているはずだったのに、突然警察(パトカー)に呼び止められ、何かと思い話を聞いてみたら実は交通違反をしてしまっていた、ということがあります。
普段、道路を利用するうえで交通のルールを定めているものを道路交通法(以下、道交法)といい、それを破ってしまうことすなわち違反となるのですが、今やその条文の数は100をゆうに超えています。
道路を利用する者として(建前上)覚えておく必要はあるとはいえ、さすがにその内容を全て記憶している人は…ごく少数でしょう。しかし、知らなかったでは済まされないのがこの世の常。現実は非情です。
そこで今回は、知っておけば明日から安全運転への意識が高まる!逆に知らないと違反を繰り返すことになるかも!?というような、意外と知られていない道交法をピックアップして紹介していきます。
意外と知らない、でも知らないと違反になってしまう交通ルール
【1】歩行者がいる横断歩道で一時停止しない(歩行者妨害)
普段運転していて、最もよく見かけるケースがこれです。
横断歩道では歩行者が優先です。横断歩道を渡ろうとしている歩行者を見かけた場合は、歩行者がを渡りきるまで一時停止しましょう。仮に対向車が止まらなくとも、です。
歩行者がいるにも関わらず横断歩道を通過してしまうと、歩行者妨害(道交法第三十八条違反)となります(上記このケースにおいては対向車はそうなります)。
「わかってるはいるけど、警察もいないしついつい行ってしまう。」というそこのあなた!最近は警察も取り締まりを強化しているようなので、繰り返しているいつか捕まりますよ!
心当たりのある方は、まずは意識改革から始めるようにしましょう。
(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
罰則 3か月以下の懲役または5万円以下の罰金、違反点数2点、反則金9,000円(普通車)
横断歩道は歩行者が渡りきってから発進しないとだめ?
さて、ここで気になるのが「横断歩道では歩行者が渡り切る前に車を発進してもいいの?」という話です。
例えば、片側3車線(反対車線含めると計6車線)もある幅広い道路があったとして、そこの交差点の横断歩道を歩行者が渡るとしましょう。あなたは左折しようとしています。
このケースにおいて、歩行者があなたの車の目の前を横切り反対車線側に差し掛かったとしても、あなたは車を発進させずに待たなければならないのか?
答えは、待つ必要はありません。
上記、道交法三十八条のライン部分を振り返ってみると『横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは(中略)その通行を妨げないようにしなければならない。』とあります。つまり、歩行者が車の前方(目の前)を通り過ぎたあと、その通行を妨げることなく安全に発進できると判断した場合は、横断中であったとしても基本的には発進してしまって問題ないのです。
横断歩道のない場所でも歩行者を優先しなければならない?
もう1つ、意外と知られていない事実があります。
それは、横断歩道がない場所でも歩行者を優先しなければならない場合があるということです。
道交法三十八条の二を見ると、以下内容が記載されています。
(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)
第三十八条の二 車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。
これだけ見ると「えっ?!これだと歩行者ってどこでも渡っていいことになるじゃん!」と混乱してしまうかもしれません。
しかしご安心を。歩行者に対する条文も、別に存在しています。
(横断の禁止の場所)
第十三条 歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。
2 歩行者は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。
ということで、車の往来が多い道路などは「車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。」に該当するので、歩行者はその道路において交差点以外で渡ってはいけないことになります。第三十八条の"横断歩道が設けられていない場所"というのは、狭い路地における丁字路や交差点などの限定的な場所を想定しているのです。
なので、あまり臆することはないのですが、前述の通り横断歩道のない場所でも歩行者優先になる場合があるということについては認識しておくと良いでしょう。当記事序盤の寸劇(?)がこのパターンに該当します。
横断歩道で歩行者に譲られたとしても発進してはいけない?
こちらもよくある例です。交通ルールを理解していない小学生などがやりがちな『どうぞ、という素振りを見せて車を通そうとする』この行為。
善意なのか遠慮なのかはさておき、譲られるがままに歩行者を差し置いて横断歩道を通行しまうのもNGです。警察に見られると検挙されます。
これに関して、ネット上では「理不尽だ。」という声が多く見受けられます。確かにその通りかもしれませんが、結局、車が通過した後に歩行者は横断歩道を渡るので渡る意思はあるわけです。そういうこともあり、言い訳は通用しません。
そのため、無用なトラブルを避けるためにも、歩行者がどれだけ遠慮しようとも、こちらも負けじとどうぞするなり腕で大きくバツを作るなりして頑なに譲る意思を示し、意地でも渡らせるようにしましょう。
【2】幼児が歩いている場所をそのまま通過する(幼児等通行妨害)
最初の項目から長々説明を入れてしまったので、以降は道交法の引用はほどほどにしてサクサク進めていきます。
次は、幼児等通行妨害(道交法第七一条の二~二の三)です。幼児等とうたっていますが、ここには目の見えない方などの障がい者も含まれています。なにより、初めて聞いた方が多いのではないでしょうか。
では、幼児等通行妨害とはどういったのものなのか?
簡単に言うと「障がい者や、保護者を伴わない幼児*1のそばを通る時は、徐行*2して通行してね。」ということです。
目の不自由な方や行動がよめない幼児はふいに道路に飛び出す可能性があり、それによる事故を予防するための措置といえます。
*1:幼児とは、未就学児:1~6歳くらいまでの子どものこと
*2:徐行とは、時速10km以下の、即座に車を停めることができる速度のこと
なお、対象者がガードレールの外側を歩いているなど、予め安全を確認できる場合においてはこの限りではありません。
罰則 違反点数2点、反則金7,000円(普通車)
【3】バスが停留所から発進しようとしてるところを追い抜く(乗合自動車発進妨害)
バスが停留所から発車しようとしているところを追い抜くことは、乗合自動車発進妨害(道交法第三十一条の二違反)となります。
これもしょちゅう見かけますが、みんな違反です。バスを早く抜きたい気持ちは分からなくもないですが、発車しようとしているところを無理に抜いてはいけません。バスが停留所に停車する場合は左ウインカーを出します。このウインカーが消えたら発車のサインなので、消えるのをバス後方から確認したら、その場で留まるにしましょう。
写真のように「乗降中」のネオンを出すバスもあるので、これが消えたら発車のサインとみる方法もあります。
罰則 違反点数1点、反則金6,000円(普通車)
【4】逆あおり運転(妨害運転)
前を走行している車に極端に距離を詰める、クラクションを連打する、横から幅寄せするなどの行為をあおり運転、またの名を妨害運転といいます。
妨害運転(道交法第百十七条の二の二)は、かつて発生した事故(事件)によって改正され、現在は他の道交法よりも厳罰化されています。
あおり運転行為はもってのほかですが、中には"逆あおり運転"というものがあることを是非覚えておいて下さい。
逆あおり運転は、後続車に対しての嫌がらせ行為です。ブレーキを連打する、わざとノロノロ運転するという行為もれっきとした妨害運転となりますので、絶対にやめましょう。
妨害運転とみなされると、一発で免許取り消しになるほどの違反点数をもらうことになります。
罰則 違反点数25点、3年以下の懲役または50万円以下の罰金
罰則(重大と認定された場合) 違反点数35点、5年以下の懲役または100万円以下の罰金
【5】安全を確認せずにドアを開ける(安全不確認ドア開放等)
路上などで一時停車し、車から降りるとしましょう。
この時、車の前後左右を確認せずドアを開け、そばにいる通行人や自転車などにぶつけケガを負わせてしまうと、安全不確認ドア開放等(道交法第七十一条の四違反)となります。
ドアを開けた時に隣の車にぶつけてしまう行為(通称ドアパンチ)も同様です。ただし、よほど悪質でない限りは、お互いの保険会社を通して解決に向かう場合が多いです。
罰則 違反点数1点、反則金6,000円(普通車)
【6】サンダルを履いて運転する(安全運転義務違反)
特に夏場にやりがちな、サンダルでの運転は安全運転の義務(道交法第七十条)の違反となります。
※サンダルのほか、ヒールの高い靴(ミュールなど)も不可
通常、車に乗っていると足元は見えないので、他の違反で検挙された時に判明するケースが多いようです。(海辺での取り締まり強化で見つかってしまう場合もあり)
罰則 違反点数2点、反則金9,000円(普通車)
【7】サンシェード・サイドシェードを取り付けたまま走行する(乗車積載方法違反)
夏の日除けにピッタリのサンシェードですが、前列席(助手席と運転席)の窓ガラスに取り付けたまま走行すると、乗車積載方法(道交法第五十五条の二)違反となります。
運転するにあたって、視界を妨げるものをフロントガラスや前列席の窓ガラスに貼ったりしてはいけません。窓ガラスの日差しや紫外線が気になったとしても、走行中はこれらを外すようにしましょう。
なお、後部座席の窓ガラスは取り付けたままでも問題はありません。
また、子どもやペットを膝にのせて運転しても同法の違反になりますので、ご注意を。
罰則 違反点数1点、反則金6,000円(普通車)
【8】雪道をノーマルタイヤで走行する(法令違反)
雪道をノーマルタイヤで走行すると、走行していた各都道府県における法令に基づき罰金が科せられます(違反点数の加点は無し)。
毎年ニュースで降雪情報が報じられると、山道でスリップや立ち往生している車の映像がお決まりのごとく流れてきます。
その際、ドライバーはインタビューにて
「こんなに積もるとは思っていませんでした、正直びっくりです。」
とか
「これくらいなら行けると思ってたんですけどね。ダメでした。」
などと笑って受け答えしてますが、警察にとがめられた場合は後々反則金を支払うことになります。ノーマルタイヤを装着中の車は、降雪予報が出ている日は車に乗らないようにしましょう。
罰則 反則金6,000円(普通車)、5万円以下の罰金
【9】右左折する時に大きくふくらむ(交差点右左折方法違反)
左の路地などに入る際、必要以上に右に寄ってから曲がっていく車を見たことはありませんか?実はあれも違反なんです。交差点右左折方法(道交法第三十四条)違反となります。条文は以下通り。
(左折又は右折)
第三十四条 車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。
これより、左に曲がる場合はできるだけ左側に寄って曲がる必要があります(右折もまたしかり)。
ただし、車両の大きさや幅に対して狭い路地に入る場合や、電柱などが支障となりで左(右)側に寄せることが難しい場合は、必ずしも遵守することはありません。必要以上にふくらまなければ良いのです。
罰則 反則金4,000円(普通車) ※違反点数の加点は無し
【10】標識の見落とし
最後は、標識の見落としです。標識そのものは目に留まっても、それに付随している規制対象や時間帯の情報を見落としがちだったりしませんか?
実際、私がかつて住んでいた家の近くの道路も、時間によって車両の通行禁止となっているのですが、標識を見落とし、通行禁止の時間帯に入ってきた車が、待ってましたと言わんばかりに待機していた警察にしょっぴかれる瞬間を度々目撃しています。
初めて来た場所で土地勘がなかった…なんて言い訳はもちろん聞き入れてくれるわけもないので、見落としには十分注意しましょう。正に知らなかったでは済まされない、というやつです。
なお、↑の画像例でいくと、バス専用レーン標識は「この標識から先、土日祝日以外の午前7~9時の間は、バスかタクシーかバイクしか通ってはいけませんよ。」ということを意味し、歩行者専用標識は「土日祝以外の午前7時半~9時間での間は歩行者専用道路になりますよ。でも自転車はOK」ということを意味します。
いつも通っている道路やこれから通ろうとする道路の標識に、何かしらの規制がないかどうかはしっかりと確認するようにしましょう。
罰則 違反点数1点、反則金7,000円(普通車) ※バス専用レーンの通行、歩行者専用道路の通行とも
【豆知識】知ってると得するかもしれない?実は交通違反じゃないもの
クロックスや裸足で運転してもOK!?
前項にて、サンダルを履いての運転は違反になることを説明しましたが、実は、道交法第七十条ではどういった靴がNGかなどの規定が明記されていません。内容は以下の通りです。
(安全運転の義務)
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
ということで、アクセルやブレーキが問題なく操作できるのであれば基本的にはどんな靴でも問題はないのですが、結局、警察の裁量ではサンダルやヒールは違反となっていしまいます。ではどういったものなら問題ないのか?
答えは、安定している(脱げない)靴です。
かかとが固定されている靴やサンダルは、脱げる心配がないのでセーフとなります(だだしすぐ脱げるようなゆるい固定はダメ)。そのため、この理屈でいえば、かかとを固定できるベルトがついているクロックスも着用OKということに。
もっといえば、裸足で運転しても全く問題はないのです。
ただし、裸足での運転はペダルを踏む感覚が靴を履いている時とはまったく変わってくるので注意しましょう(実経験有り)。
海などの夏のレジャーや、日帰り温泉などに行く時に覚えておくと便利です。
初心者マークはずっと貼っていても良い!?
「運転免許を取ってもうすぐ1年になるけど、運転に自信ついてないし…できればまだ初心者マークは貼っておきたいな。」
「数年間運転してなかったらちょっと怖い…!とっくに初心者は卒業したけどまた貼っちゃダメ?」
運転免許を取得たら1年間、初心者マークは必ず貼らなくてはなりません(貼らないとそれはそれで違反になります)が、1年経ったからといってじゃあ外さないと違反になるかといえば、実はなりません。極端にいえば、初心者マークは一生貼っていても良いのです。
ということで、初心者卒業を控えたけどまだ初心者マークは貼っておきたい方や、ペーパードライバーで初心者マークを今一度貼りたい方は、自信がつく(自信を取り戻す)まで気にせず貼り続けるようにしましょう。
※ただし、そもそも運転技術に自信のなくなってしまったペーパードライバーの方はまた別問題なので、ペーパードライバー講習を受けるなどの対策を行ってから運転するようにして下さい。
まとめ
今回は、意外と知られていない道交法と、実は交通違反にはならない項目を紹介しました。
知らないと違反になってしまう道交法をおさらいしておきましょう。
- 歩行者がいる横断歩道での一時不停止(歩行者妨害)
- 幼児が歩いている場所をそのまま通過する(幼児等通行妨害)
- バスが停留所から発進しようとしてるところを追い抜く(乗合自動車発進妨害)
- 逆あおり運転(妨害運転)
- 安全を確認せずにドアを開ける(安全不確認ドア開放等)
- サンダルを履いての運転(安全運転義務違反)
- サンシェード・サイドシェードを取り付けたまま運転(乗車積載方法違反)
- 雪道をノーマルタイヤで走行(法令違反)
- 右左折する時に大きくふくらむ(交差点右左折方法違反)
- 標識の見落とし
日本の運転免許は加点式で、6点から免許停止処分になります。
※前歴によって変わります。
紹介した中には2点加算となる違反もあるため、それに1度違反してしまうと、免停となる点数に一気に1/3も近づくことになるほか、ゴールド免許の人は次回更新時にブルー免許に転落するという二重苦を味わうことになってしまいます。
免停にならないよう気を付けて運転するのことはもちろん大事なことではありますが、普段から「あおり運転はしない」「歩行者やバスを優先する」など運転の基本中を基本を守っていれば、警察のお世話になることはまずありません。
次の記事では、意外と知られていない交通ルールの高速道路編を公開していますので、併せて見ていただけると運転の意識が更に高まります。
【要注意!】最低速度違反?知らないうちに違反してしまっている意外な交通ルール(高速道路編)
心にゆとりをもった運転ができる人が1人でも増えてくれれば、同じドライバーとして大変嬉しく思います。
それでは、引き続き楽しいカーライフを過ごしていきましょう。
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